卒業生の研究一覧

ここでは卒業生の研究をご紹介します。掲載している情報は在学当時のものです。

マイクロ波加熱・高周波加熱
 通電加熱
 燻煙加工
 過熱水蒸気加熱

[一般調理]

 茹で調理
 放射伝熱
 その他

マイクロ波加熱における調理特性―サツマイモの糖度変化―

マイクロ波加熱による炊飯の解析

 マイクロ波加熱とは、電子レンジで加熱を行うことです。マイクロ波を照射することで食品そのものの内部が発熱し温度が上がります。
  最近では食の簡便化や省力化に伴って電子レンジを使った調理が注目されています。既に電子レンジ専用の炊飯容器は市販されています。もしかしたら、皆さん も目にしたことがあるのではないでしょうか?しかし、電子レンジで炊いたご飯は、電気炊飯器に比べてあまり美味しくないと言われています…。美味しいご飯 を炊くには、十分な量の水と加熱時間が必要だとされています。しかし、電子レンジは加熱する時間が短く、場所によって温度にバラつきがあることが分かって います。

  発熱分布(温度分布)は、容器の形状や加熱しようと思っている食品素材の誘電特性、さらに使用する電子レンジのタイプによっても大きく異なります。この研 究ではこれらの要因を出来るだけ組み入れて予測計算ができるようになることを目指しています。予測計算ができるようになれば、さまざまな条件に対応した加 熱パターンを知ることができ、加熱ムラの改善に繋がると考えています。このようにして、実験で得たデータを基に予測を行い、加熱時間が短いという電子レン ジの特長を活かしつつ、加熱ムラのできない加熱パターンや容器の提案を行っていきます。

フラットテーブル型電子レンジを用いた際の食品の温度シミュレーション

研究概要

 現在,電子レンジは食品の再加熱だけでなく,調理器として注目されています.実際にさまざまなレシピ本が発売されています.しかし,電子レンジの温度予測はほとんど行われていないため,電子レンジ調理は経験に基づいて加熱時間が決められています.そこで本研究では,解析ソフトを用いて電子レンジの温度予測方法の確立を目指しています.

電子レンジの構造

 ターンテーブル型電子レンジはマイクロ波が加熱庫の上から照射され,食品を載せる台(ターンテーブル)が回転するのに対し,フラットテーブル型電子レンジはマイクロ波が下から照射され,加熱庫の下にある回転アンテナが回転します. 

 この研究では上記で説明した電子レンジの構造(加熱庫,導波管,回転アンテナなど)をパソコンでモデル化して,解析ソフトを用いて計算を行い,最後に温度変化を目に見える形にします.先程説明したフラットテーブル型電子レンジはターンテーブル型に比べて構造が複雑であるためモデル化するのが難しく,解析がほとんどされていません.そのため,私は今までほとんど研究されていないフラットテーブル型電子レンジの温度シミュレーションを行っています.

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高周波誘電加熱を用いた食品の解凍

 高周波加熱は電子レンジなどのマイクロ波加熱と同様の誘電加熱です.食品を内部から均一に温めます.高周波のほうがマイクロ波よりも長い波長を持ち,厚さのある食品であっても加熱されやすいという特徴があります.

 冷凍ご飯を電子レンジで解凍した際に,熱い部分とまだ凍っている部分が混在しているなどの解凍ムラが起きてしまった経験はありませんか?高周波誘電加熱を用いた解凍は,そのような解凍ムラが起きにくいとして注目されています.

 某大手ハンバーガーチェーン店では,高周波解凍装置により牛肉が解凍された後にパティへと加工されます.しかし,完全解凍までは難しいという現状があります.また,高周波誘電加熱に関する理論的解析を行っている例は少ないです.実際に高周波解凍装置を用いた実験や,シミュレーションを行うことで食品をより均一に解凍するための加熱条件の検討を行っていく予定です.

液卵の通電加熱加工を支配する電気特性

通電加熱とは…

研究概要

今後の課題


  • Optimization of salmon cooking using ohmic heating based on heat transfer analysis

通電加熱を利用したサラミソーセージの新製法に関する研究

【研究概要】

まず,主な食肉製品における一般的な製造日数を示すぜよ. ウインナーやロースハムなどは塩漬を除いて約1日で製造出来るのに対して,サラミソーセージは製造に約22日必要であり,他の食肉製品に比べて大変長い時間必要ということが分かるぞい.
そこで,この製造日数の長いサラミソーセージに着目し,どの工程に長時間必要としていて,短縮することは出来ないのか,検討することとしたんじゃ.

こ のように,サラミソーセージ製造では,「冷蔵乾燥工程」に長時間を要していることが分かるじゃろ.冷蔵乾燥では,乾燥ムラを抑えて,ゆっくりと乾燥しなけ ればならないことから,低温で21日という長い時間をかけて乾燥する工程となっているぜよ.この長時間の工程を短縮することで,大きなコスト削減を実現で きると考え,本研究では,この「冷蔵乾燥工程」を新しい乾燥法で短縮出来ないか検討したぜよ.
    真空乾燥と通電加熱を組み合わせた「真空通電」と真空乾燥のみで乾燥した「真空のみ」,そして,標準製法の「冷蔵乾燥(5℃)」で乾燥させた結果,重量の 減少率変化は右の図のようになったぜよ.乾燥終了点は約43%重量減とすると,標準製法では乾燥に製造に約21日要しているのに対し,真空乾燥では,約 13日要し,真空通電乾燥では,約8日で製造することが出来たのじゃ.これにより,真空通電乾燥では標準製法よりも約13日短縮することが出来たんじゃ. これは世紀の大発見じゃ~!!!

【今後の目標】

 新製法(真空通電乾燥)と標準製法(冷蔵乾燥)の品質データ【水分・色・味】を比較し,何が異なるか,なぜ異なるのか,検証するだっちゃ.
byザワちん

通電加熱を用いたデンプン食品の特殊加工に関する研究

研究概要

小麦デンプンを主成分とする生うどんは,一般的に,可食となるまでに,長い茹で時間を必要とします.本研究は、これを解決するために,通電加熱を利用して,あらかじめデンプン食品を一定程度糊化させることにより,調理時間を短縮することを目指します。

製麺方法

次の工程で、麺を作製します。

  1. 小麦粉と食塩水を試料として、自動混練機で十分に混練して、ドウを作製した。
  2. 電動製麺機を用いて、厚さ3mmの麺帯に成型した。
  3. 麺帯の両面に電圧を印加して、目的の温度に制御しながら通電加熱を行った。
  4. 通電加熱された麺帯は、再び、電動製麺機で麺線にする。

これまでの結果

  通電加熱した麺と通電加熱しなかった未加工麺の含水率を比べると、通電加熱によって加工した麺の方が、吸水速度が速く、内部の水分分布をMRI法で可視化 すると、加工麺の方が麺中心部まで水が到達していることが明らかになりました。現段階で、約30%茹で調理時間の短縮が達成されています。

今後の目標

 通電加熱によって、どの程度、デンプンが糊化し、また、それによって、茹で調理を行った時に麺内部へどのように水が移動してくのか、予測できるようにします。調理時間が短く、かつ食感も良い麺を製造するための条件を確立することが目標です。

ロースハム製造時の燻煙成分の吸着・拡散過程の解析

1.概要

 畜肉燻製品(ハム・ソーセージ・サラミなど)には経験的な勘などを頼りにして、作る時の条件を決めて作っていることが多くあります。この研究では、最初からどのような製品が出来るのかを、目に見える数字に変え、予測していくことで、無駄をなくして、同じ味や色の製品を作り続けられるようにすることを目標にしています。

2.ハムの作り方

ハムの作り方

 この実験では、ハムの作り方の中でも、燻製品の特徴的な加工である「燻製」について実験をしています。燻製の時に使用する燻煙の濃さによって、ハムの味・色合い・香りが変化します。しかし、どれくらいの燻煙があると、どれくらい燻製されるという数値的データがありません。そこで、燻煙とハムへの吸着量の関係を調べ、最終的に、原料の段階から、完成するハムの状態を、数値を元に予測するということを行うことを目標としています。

 燻製品は、煙と肉の状態によって燻煙の付く量が変化します。この研究では煙の濃度が沢山煙をお肉にかけると、沢山燻煙の味がするようになると考えられています。そのことを、どのくらい沢山の煙をかけると、どのくらいお肉に味や香りがくっつくのかということを計算によって、実際に毎回どのくらいの煙が出るのか試さなくても予想できるようにするのがこの実験の目的です。

畜肉燻製品製造工程における水分移動

~概要~

 畜肉薫製品(ロースハム・サラミなど)の製造工程では、温度や時間の設定は経験的に決められています。そこで、製造工程を科学的に解析・定量化することで無駄をなくし、どんな条件でもおいしい畜肉薫製品が作れるようにするため、製造工程の検証が必要です。

 本研究ではロースハムを試料とし、ロースハムの製造工程中に起こる水分移動や収縮現象の解析および現象把握を主なテーマとしています。

~ロースハムの作り方~

 ロースハムの作り方については、「ロースハム製造時の燻煙成分の吸着・拡散過程の解析」のハムの作り方のページと同じ作り方をしているので、そちらを参照してください。

~研究内容~

 ロースハムの原料となるのは「豚のロース肉」です。ロース肉の主な成分には水分やタンパク質があります。タンパク質は熱に弱く、高温にさらされると本来の形を保つことができなくなります。そのため、肉も形を変化させ、行き場を失った水分が外へと出て行きます。

 ロースハムを作る際にも「加熱」の工程で同じ現象が起こり、その他に「乾燥」の工程でも水分が蒸発します。そこで、本研究では製造工程全体を通してどれくらいの水分が外に出て行くのかを把握しようと試みています。

 そして、それぞれの工程でどの程度の水が外に出て行くのかを把握し、最終的には原料の段階から、どの程度の水分が出て行くのかを予測できるようにすることが目標です。

過熱水蒸気を用いた食品の焼成に関する研究

・どんな研究をしているのですか??
 高級オーブンレンジや大型の食品加工機械で使われている過熱水蒸気 (SHS)に関する研究だよ.SHSって近年急速に世の中に広まっているんだけど,実はSHSをどのくらいの流速で噴き付けたら良いのかとか,食品との距離はどうしたら良いのかとか,何分噴き付けたら良いのかってことは経験的に決められているだけで,詳しくは分かってないんだ.
 そこで僕はこの中の流速に注目して,流速の違いで食品の温度上昇や焼き色や重量がどのように変わるのかを予測し,シミュレーションする研究をしてるんだ.
・予測できると何か良いことがあるのですか??
 最適な条件を予測できるようになれば,無駄な加熱をしなくてもよくなるし,それによって電気代も抑えることができる.さらには食品加工機械で一度に大量の商品を作るときにきちんとシミュレーションができていれば,今まで経験的に行われていた作業を減らすことができ,商品のロスを減らすことができるようになるよ.
・なるほど~.では,現在の進捗状況と今後の予定を教えて下さい.
 現在はシリコンを食品に見立てたモデル実験をやっているよ.いきなり食品でシミュレーションをしようとすると,水分の移動とかが起こって解析が難しいからね.でも,シリコンでシミュレーションが構築できたら,実際に魚を使ってシミュレーションをしていく予定だよ.

過熱水蒸気加熱を用いた魚の焼成調理

これまでの結果

試料の鮭は、解凍せずに冷凍したまま過熱水蒸気で焼いた方が、残重量率が高く、含水率も高くなった。

ということは、よりジューシーな焼き魚であるということ!

次に焼き色は・・・?

これまで、過熱水蒸気を用いた焼成では上手に焼き色が着かないと言われていた。しかし、写真を見てみると、中心温度が90度(終点)に達した鮭には、しっかりと焼き色が着いていた!

今後の計画について

過熱水蒸気を用いて焼いた魚の焼き色を色彩値という値を使って表し、焼き色の着き方を研究します。さらに、魚の種類や魚の脂質含率を測定して、焼き終わった魚の品質への影響を研究します。

調理済み米飯の製造工程における熱物質移動および反応の解析

加熱水蒸気による食品の殺菌ーCFDによる吹き付け速度の解析ー

概要

ドライヤーに強風機能があるように,例えば熱風により食品を加熱したいとき,熱風を食品へ吹き付ける速度(流速)を大きくすることで短い時間で食品を加熱することができます.この研究では,この流速についてCFDという特殊なコンピュータのソフトを使って調べています.このソフトを使うと右のアニメーションのように空気の流れを人間の目に見える形で表示してくれます.このような手法を流体の可視化といい,目に見えない流体を可視化することで,実際の生産工程で熱風をどのように食品に吹き付ければよいのかを検討できるようになりました.一方で,「ヘルシオ」と呼ばれる過熱水蒸気オーブンが,健康に良い調理機器として話題となっています.過熱水蒸気とは100℃以上の高温に加熱された水蒸気で,近年食品業界で注目を集めています.そこで,話題の過熱水蒸気を食品の殺菌に応用できるのではないかと考えて,この研究がスタートしました.

しかし,なぜ,そのような新しい殺菌技術が必要とされているのでしょうか.現在,スーパーマーケットなどでよく見かける浅漬け食品(右の写真)は,実は加工工場で薬剤による殺菌が行われています.もちろん,健康にほとんど害のない薬剤なのですが,消費者心理としてはやはり薬剤という言葉だけでも疑ってしまいますよね.過熱水蒸気は元が水ですので,健康面では何の心配もありません.そこで,この研究では浅漬けに用いられる代表的食材である白菜を対象として,白菜を実際に過熱水蒸気で加熱し,その味について検証を行っています.薬剤の強みは処理を行っても味がほとんど変化しないことで,過熱水蒸気では白菜がふにゃふにゃになってしまい,浅漬け食品にすると薬剤処理のほうがやはりおいしくなってしまいます.過熱水蒸気による殺菌で,健康的でおいしい浅漬け食品を作る手法を開発することが研究の最終目標となります.

鍋内対流が調理におよぼす影響・昆布だしの解析

1. 対流とは??

 対流って、流体の流れを表す単語なんだ。流体って、空気とか水とか流れるものを指すんだけど、ここでは鍋内の水の動きを対流って呼ぶことにしているんだ。風呂のお湯をかき混ぜるときの水の流れをイメージしてもらうと分かりやすいかな。この流れがゆるやかだったり、激しかったりすることで、だしの仕上がりが違ってくるらしいんだけど、そこらへんの研究ってほとんどされてないんだよね。だしをとる時って、水から火をかけて煮立てるんだけど、温度が上がるにつれて対流も起こるから、対流の影響って無視できないのさ。

2. 昆布だしについて

 昆布だしは、日本料理で最も使われるだしであるから、そのとり方はとても重要なんだ。鰹節と合わせて使う一番だしは、最も上品なだしとして有名だよ。昆布だしは、水から昆布を煮立ててだしをとるんだけど、その際最も大切なことは、煮立つ前に昆布を取り出すこと!!!煮立ってから昆布を取り出すと、出て欲しくない成分まで出てしまって、あまりおいしくないだしになってしまうんだ。だしのとり方で面白いのは、料理人でその方法が異なることかな。みんな、自分の経験に基づいてだしに関してあくなき挑戦を続けているんだ。ここの研究室では、実験データに基づいて、こういった料理人の手法を解明することを目的としているよ。

3. 最後に

 ぼくが、この研究室でどんな研究に使われているか分かってもらえたかな?研究をするうえでいろいろ難しいことはあるけど、成果をだしてもらえるようにぼくも頑張るよ!!この研究室のテーマは「予測と実測」なんだ。ざっくり言うと、実際に実験で得られたデータを元に、パソコンでシュミレーションを行って、実測値と予測値を近づけることをやっているんだ。ぼくは、まだそんな対象じゃないけどね。笑

乾麺茹で調理における流れの影響

1.麺の茹で調理について

 最近では,麺類などの小麦粉を原料とした食品が食される場面が増え,外食産業では低価格で、注文から短時間で提供される麺類を扱った店が増加しています.

 そんな中,麺の茹で調理では,鍋の中の流れの状態が,茹で時間や麺のおいしさに影響すると言われていますが具体的にどのような状態が良いのかということは明らかにされていません.そこでこの研究では鍋内の流れの状態が麺の品質にどのような影響を与えるのかを調べています.

2.実験内容

茹で調理の時に鍋内に生じる流れの状態(速度,向きなど)の中でも“速度”に着目。流れの速さと麺の状態の関係を明らかにする実験を行っています.

麺類茹で調理における水分ならびに塩分の挙動解析

麺の茹で調理における流れの影響

1.茹で調理について

麺を茹でるとき,一般的には“大量のお湯で茹でる”や“かき混ぜる”と良いと言われています.しかし,その時の鍋の中の流れの状態が具体的にどのようになっていれば良いのかということは,明らかになっていません.そのため,具体的に鍋内の状態がどのようであれば良い麺が出来上がるのかを明らかにするために,鍋内の流れの状態を調べ,さらに麺にどのような影響を与えるのかを調べています.

2.実験内容

 鍋でお湯を沸かすとき,ガスだけでなく,最近はIHも多くの家庭で使われています.しかし,使う加熱調理器によって,鍋内でのお湯の動きが異なっていることが,研究によって明らかになりました.実際に,外食産業で鍋内の流れの違いが麺の茹で上がりに影響を与えているという声も出ています.

3.今後の予定

 茹で調理の時に鍋内に生じる“流れ”と言っても,速さだったり,向きだったり…表わし方は様々ですが,現在は流れの“速さ”に着目し,速さと麺の状態の関係を明らかにしたいと思っています.

麺類茹で調理時の水分移動解析

麺を茹でる理由

 麺の主成分はデンプンです。デンプンは炭水化物の一種なので摂取することでエネルギーに変わります。しかし、ヒトは生のデンプンを消化できないので、消化しやすい形に変える必要があります。その方法の一つが「茹でる」操作です。麺を茹でることによって生のデンプンが「糊化(α化)」という現象を起こして消化しやすい形となり、エネルギー源として摂取できるようになります。

麺のおいしさ

麺のおいしさは水とデンプンが影響しています。麺は茹でれば茹でるほど軟らかく茹で上がりますが、これは糊化したデンプンが軟らかくなる性質によります。うどんの舌触りやつるっとした食感は表面のデンプンの糊化。そばのコシやスパゲティのアルデンテの状態というのは水とデンプンの分布が影響しています。

 

研究内容 

 スパゲティを茹でるときに、麺の中でどのような現象が起きているかをMRIや顕微鏡などを用いて解明しています。この現象を基に、麺のおいしさに関わるとされる水とデンプンの状態がどのように変化していくかをシミュレーションしています。

今後の目標

 今後はより実際の茹で調理に近いシミュレーションを完成させたいと考えています。そのシミュレーションを基に、電子レンジ調理などの簡易的な調理法の確立や、早く茹で上がるための機械の開発などに貢献できたらと考えています。

魚皮の焼成調理シミュレーション

どんな研究?

 うなぎの蒲焼き,焼きサンマ,鮎の塩焼き,焼き鮭…こうした「焼き魚」の生焼けや焼きすぎを防いで「おいしく」焼くのは難しいと思います.本研究室では以前から焼き魚についていくつかの研究を行っており,これまでにプロの調理の測定から「おいしい」とされる重量や温度が,そして研究室での実験から白身魚の身が焼き色をつけていく過程がわかってきています.

 しかしおいしさの指標のひとつと考えられる「焼き魚の皮」についてはあまり研究がなされていません.そこで本研究では「皮の焼け方」について考えていきます.

魚を焼く“放射伝熱”

 ヒーターで魚を焼く場合,魚は直接火に当たっていないのに焼けます.それは放射伝熱を利用しているからです.

 「放射伝熱」というと小難しいですが,天気のいい日に太陽が出ていると暖かいのと同じ原理です.ただ,ヒーターで魚を焼く場合は近くから大量のエネルギーを与えるので,焼けてしまうのです.

魚の表面温度

 では,魚の皮が焼けるとき何が起こっているのか.魚を焼くと茶色く焼けているところとそうでないところが出来ます.この違いは焼いた時の皮の温度が原因だと考えられます.右の2枚の写真はサバを焼いた時の写真で,下の写真は特殊なカメラで温度を可視化した画像です.よく焼けているところほど温度が高くなっているのがわかると思います.

 つまり皮の温度と焼き色の関係がわかれば,焼き色が簡単にコントロール出来るようになると考えられます.これからさらに実験を重ねていって,しっかりとした研究にしていきます.

魚の焼成調理シミュレーション

焼成調理というと難しく考えるかもしれませんが、簡単に言うと『焼き魚をおいしく作るための研究』です。

1.焼き魚の現状

 日本は昔から魚を重要なタンパク源として食べてきましたが、右図を見ると平成18年には国民一人当たりの摂取量が肉類と魚介類で逆転し、近年『魚離れ』が進んでいることが分かります.焼き魚は魚料理の代表的なものですが焼き魚の焼き加減の難しさから近年敬遠されています.最適な焼き加減は料理人の経験で決められていて誰でも簡単にはできない.そこで誰でもおいしい焼き魚を作れるようにすることが必要です.焼き魚のおいしさにはジューシーさなどいろいろありますがこの研究では焼き色に注目します.

  

2.焼き色について

 焼き色は焼き魚の評価をする中で重要な項目の一 つです.焼き色の着いていないものや焦げているも のはおいしい焼き魚ではありません.また焦げによ って作られる成分には発がん性のある成分もあり、 ちょうどいい焼き色をつけることは非常に重要であ り、表面にきつね色の焼き色が着いてはじめておい しい焼き魚になります.そこでこの研究では魚を焼 いているときの魚の温度からどのくらい焼き色が着 いているのかを予測します.

3.色の数値化

 焼き色の解析を行う上で色を数値化するためにL*,a*,b*表色系を用いています.L*,a*,b*表色系は研究などでよく用いられ、L*(明度)が明るさを示しa*(赤→緑)値とb*(青→黄)値で色の鮮やかさを表します.

 

の焼成調理の最適化を目指した熱物質移動ならびに反応解析


調理における切断操作の定量および食材に及ぼす影響

 「切る」操作は調理の上で必要不可欠なものです。切り方の違いによって食材の味や食感,保存性などの品質に大きな差が生じます.そこで本研究では,プロの料理人の切り方に着目して,切り方の違いが食材に及ぼす影響について検証していきます.

今後は以下の点についても研究を進めていく予定です.

・加熱タマネギの甘味成分の変化

・煮熟時の煮崩れへの影響

プロの料理人による煮魚調理の解析

概要

 煮魚は、作る人によって調理法が様々です。また、科学的に、おいしい煮魚がどのような状態なのかは、あまり解明されていません。

 そこで、この研究では、おいしい煮魚を作る最適な調理法および、おいしい煮魚の定義を見出すために、プロの料理人の調理法を参考にして、煮魚調理の解析を行います。

 プロの料理人によると、おいしい煮魚というのは、

が重要だそうです。

 これを、科学的に分析するため、煮魚の品質評価を行っています。現在行っている品質評価は、塩分測定、グルタミン酸測定です。

 これらの呈味成分が、調理過程でどのように変化するのか、また、魚の表面と中心部でどのように違うのかを、明らかにしていくことが目標です。

研究の流れ

魚焼成調理における焼き色変化と匂いの解析

じゃがいもの加熱調理における物性変化と品質に及ぼす影響因子の探索

ステーキ調理の最適加熱制御へ向けた調理解析